シンポジウム1.加速する骨軟部腫瘍に対するゲノム医療:現状と課題オンデマンド
がん遺伝子パネル検査が、標準治療がない固形がんや、局所進行もしくは転移があり標準治療が終了した固形がんの患者を対象に、2019年6月に公的医療保険の適用となり、肉腫においてもゲノム医療が現実のものとなった。しかし、肉腫の場合、現在のがん遺伝子パネル検査で遺伝子変異が見つかる頻度が少ないことが問題である。たとえヒットしたとしても、そのそも治療薬が存在しなかったり、肉腫に対して保険適応が無い場合が多く、その有用性は今のところ限定的である。しかし、がん遺伝子パネル検査の改良と、治療薬開発の進歩により、これらの課題は大いに改善されることが期待され、がん治療は未来に向かって進化を加速することが予想できる。本シンポジウムでは、現在の骨軟部腫瘍のゲノム解析の最先端の知見をお示し頂くと共に、ゲノム医療の現状と課題、そしてそれに対する解決策をディスカッションしたい。
シンポジウム2.診療科を超えて肉腫治療を考えるーその実際と課題―オンデマンド
当学術集会ではテーマを「ダイバーシティで進化する腫瘍の格致」としている。「格致」とは中国の古典「大学」にある「格物」「致知」から取り合わせた言葉で、「物事の道理や本質を深く追求し、理解して、知識や学問を深め得ること」を意味しており、幕末に開国論を主張し、大政奉還を実現させた幕末の福井藩主、松平春嶽公が愛した言葉である。骨・軟部腫瘍に関わる多くの課題を解決するためには、多くの診療科が協力することで、「腫瘍の格致」を進化させる必要があると考え、このシンポジウムを企画した。
肉腫はあらゆる部位に発生する可能性があることから肉腫治療に取り組んでいるのは整形外科だけではなく、少なくない症例が整形外科以外で治療されている。我々、整形外科医にとっても各診療科で行われている肉腫治療を知ることは、肉腫治療のブレークスルーに繋がる可能性があり、極めて重要である。当シンポジウムでは、整形外科、消化器外科、腫瘍内科、小児科、泌尿器科、婦人科において肉腫治療に取り組んでいる先生方にご登壇いただき、「各科の診療の実際と課題」をお話し頂きたい。さらに、各診療科にとってメインテーマに成りにくい肉腫という稀少疾患において、「積極的に肉腫治療に取り組む若手育成のポイント」などもディスカッションしたい。
シンポジウム3.骨転移治療の多変数関数を解くオンデマンド
近年、がんに対する集学的治療の進歩により、がん患者の生命予後が飛躍的に延長している。例えば、肺がんは、これまで予後が悪いと考えられていたが、治療薬の劇的な進歩により長期予後が望める症例も増加している。そのような状況の中で、四肢骨・脊椎転移の早期発見と積極的な治療介入が、患者のQOL改善に大きく寄与することは明らかである。しかし、限られた医療資源のなかでの早期発見は極めて困難である。また、骨転移が発見された際の、手術のタイミング、放射線治療との使い分けも明かな指針は無い。手術方法に関しても、大腿骨転子部の病変に対する治療法(内固定vs腫瘍用人工骨頭置換)、脊椎転移に対する固定の必要性の有無、など未解決な問題が多い。個々の症例の骨転移の最適な治療方法を見つけ出すことはまさに多変数関数を解くことに他ならない。当シンポジウムでは、多変数関数を解くためのポイントを明らかにし、ディスカッションしたい。
シンポジウム4.肉腫治療の次の一手オンデマンド
肉腫に対する新規治療薬が2012年以降次々と登場したが、既存の治療薬・治療戦略だけでは乗り越えられない壁が存在する。当シンポジウムでは、医師主導治験や臨床研究ですすんでいる先進的な治療研究をご紹介いただくとともに、未来への展望をディスカッションしたい。
シンポジウム5.進化するJCOG骨軟部腫瘍グループ
ー20年を総括し、これからの20年を展望するーオンデマンド
悪性骨軟部腫瘍は他のがん種と比較して発生が稀であり、 しかも組織型が多岐にわたるため、限られた患者数の単一施設では新しい治療法の開発が極めて困難な疾患であり、骨軟部腫瘍に対する標準治療の確立のためには全国規模の多施設共同研究が不可欠である。そこで、2002年度からJapan Clinical Oncology Group(JCOG)内の1グループとして骨軟部腫瘍グループが立ち上がり、精力的な活動が行われてきた。現在、代表的な悪性骨腫瘍である骨肉腫および軟部肉腫を対象に標準治療の開発を目指した臨床試験を行うとともに、それらの附随研究が実施されており、世界に向けたエビデンスを発信するポテンシャルは海外でも高く評価されている。当シンポジウムでは、骨軟部腫瘍グループによる各研究担当者に研究目的、プロトコルをお示し頂いた上に、その研究成果を可能な範囲で公開して頂くと共に、今後の課題・展望についてJCOG統計家を交えて熱くディスカッションする。当シンポジウムが、骨・軟部腫瘍グループ創設から20年の多施設共同研究の歩みの総括となり、次の20年に向けた起爆剤となることを期待する。
シンポジウム6.小児・AYA世代の肉腫治療の現状と課題オンデマンド
小児・AYA世代の肉腫治療には成人の肉腫治療とは異なるアプローチが必要である。小児においては、体や心の成長に応じたアプローチが必要であり画一的な治療では対応できないことが多い。薬物療法や手術治療を考えるときには治療による長期的な合併症のことを常に考える必要がある。さらに、長期入院を強いられることが多いため、患者および家族には大きなストレスがかかることから、様々な支援体制も必要である。また、AYA世代に於いては、家族との関わりや就業、経済面、妊孕性など多岐にわたるサポートも欠かせない。このセッションでは小児・AYA世代の肉腫治療の現状と課題について、診療科・職種横断的に考えてみたい。
シンポジウム7.腫瘍用人工関節 感染予防と感染のおさめかたオンデマンド
悪性骨腫瘍切除後の骨欠損に対する腫瘍用人工関節による再建術は、現在では標準的治療となったと言っても過言ではない。しかしながら、5~10%の症例は術後感染を来すと報告されており、通常のTHAやTKAの実に10倍以上の頻度で感染が発生していることになる。骨軟部腫瘍の治療成績の向上を目指すのであれば、感染対策を考えずに腫瘍用人工関節手術を行うことは許されない。シンポジウムでは腫瘍用人工関節感染の実態と予防、治療法について熱くディスカッションしたい。
シンポジウム8.がんロコモ:患者のQOLを向上させる為にほんとうに大切なことオンデマンド
がん治療におけるがんロコモ対策の重要性はあきらかである。運動器の専門科を自認する整形外科医は、がんロコモを正しく理解したうえに、積極的に取り組む必要がある。しかし、「いったい何をすれば良いのか?」具体的な方法が判らない整形外科医が多い。演者には「医療者が取り組むべきがんロコモ対策の実際」を職種横断的にお示しいただいた上に、その有用性・重要性を実例やデータを挙げながらディスカッションしたい。