ご挨拶

第57回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会
会長  松峯 昭彦
福井大学学術研究院医学系部門医学領域
器官制御医学講座整形外科学分野

この度、第57回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会を2024年7月11日(木)・12日(金)の日程で、福井市のフェニックス・プラザにて開催させて頂くこととなりました。伝統ある本学術集会を我々が担当させて頂きますことを誠に光栄に感じますとともに、このような素晴らしい機会を与えていただきました日整会会員の皆様に、心より御礼を申し上げます。

さて、骨・軟部腫瘍の診断・治療は、先人達の努力により、20世紀最後の20年に大きく進歩しました。化学療法の導入、病理診断・画像診断技術の進歩、様々な再建方法の開発により、患者の生命予後は大きく改善すると共に患肢温存手術が標準的治療法となりました。21世紀に入り、新たな技術革新の波が訪れています。新規治療薬が次々と開発され、遺伝子情報に基づく個別化医療であるゲノム医療も始まりました。切除不能肉腫を対象に粒子線治療が保険収載されたことで、治療選択肢が大きく広がりました。最近では、ラジオ波焼灼術が保険収載され、さらに日本発の新しい免疫療法やウイルス療法の治験もスタートしています。 一方、肉腫患者を取り巻く様々な問題が未解決となっています。人工関節の性能は向上しましたが、再置換を要する症例は減っていませんし、骨盤などの特殊な部位の再建方法も確立されていません。術後感染は現在も大きな課題となっています。小児腫瘍では、効果的な抗がん剤治療により患者の生命予後は劇的に改善しましたが、その代償として晩期合併症が問題となっています。さらに超高齢者肉腫の治療、AYA世代の妊孕性温存や就労の機会確保なども、避けることの出来ない大きなテーマとなっています。

第57回骨・軟部腫瘍学術集会では、「ダイバーシティで進化する腫瘍の格致」をテーマにしました。「格致」とは中国の古典「大学」にある「格物」「致知」から取り合わせた言葉で、「物事の道理や本質を深く追求し、理解して、知識や学問を深め得ること」を意味しています。幕末に開国論を主張し、大政奉還を実現させた幕末の福井藩主、松平春嶽公が愛した言葉です。骨・軟部腫瘍に関わる多くの課題を解決するためには、整形外科医、多診療科医師、メディカルスタッフ、基礎研究者、製薬企業、医療機器メーカー、行政など多くの職種がさらに協力することで、「腫瘍の格致」を進化させる必要があります。骨・軟部腫瘍診療の未来への道筋となるような学術集会にしたいと考えています。

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、2023年5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5 類」に引き下げられましたが、本学術集会は、現地開催(フェニックス・プラザ)とウェブ参加のハイブリッド形式での開催を目指しております。新型コロナウイルス感染防止には万全の対策をとりながら、皆様方のご支援・ご協力のもと、できる限り多くの方々にご参加頂き、有意義な会となるよう尽力して参りたいと思っております。

骨・軟部腫瘍学術集会が北陸の地で開催されるのは初めてです。2024年3月には、北陸新幹線が金沢から福井県の敦賀まで延伸するため、特に関東圏からのアクセスが大幅に改善します。多数の先生方のご参加を心よりお待ちしております。